吹き抜ける風に導かれた
アートと出会う場所
Gomeisa株式会社
舩橋 勇晴 様
目黒駅から東に5分。上大崎の交差点すぐの場所に「gran+ SHIROKANEDAI」はあります。目黒通りを挟み、東京都庭園美術館の向かいという立地のよさと「縦長の空間に流れるやわらかな空気が決め手でした」と振り返るのは、アートギャラリーを運営するGomeisa株式会社の舩橋さんです。入居の決め手や『Gomeisa GALLERY』の魅力を伺いました。
──舩橋さんが運営されているアートギャラリー『Gomeisa GALLERY』をご紹介ください。
主に若手アーティストを中心として、絵画、造形など多彩な作品を展示しています。また、ギャラリーの会員さん向けにアーティストを紹介するトークセッションや、美術界隈の著名人にお話しいただくなど、月2回ペースでイベントを開催しています。
作品を発表する場を探しているアーティストのために、画廊を開放しておりますし、ゆくゆくはギャラリーの公式サイトにEC機能をもたせて、アーティストとファンの新たな接点として有効活用してほしいと思っています。
──アーティストの方々をサポートしていきたい思いが強いのですね。
私自身、ギャラリーを立ち上げる前は会社員をしていて、マーケティングやイベント分野に身を置いていました。芸術の世界とは異なる視点だからこそ生み出せるプロデュース力を、Gomeisaならではの強みに育てていきたいですね。
──「gran+ SHIROKANEDAI」に入居したきっかけを教えていただけますか?
会社員時代から個人的に開催していたアートイベントや企画展の規模が大きくなってきたこともあり、どこかいい場所を確保したいと思っていました。
条件は「空気の通りがいいところ」「70㎡前後というサイズ」、あとは「使いやすい壁があるか」です。作品を飾り、人が大勢いらっしゃるため、このあたりはとても大事にしていました。
不動産会社さんにこれらの条件を伝え、物件を紹介してもらうのですが、1カ月経っても2カ月経ってもピンとくるところが全然ないんです。銀座、六本木、溜池山王……30物件以上は見ましたが理想の場所がないまま、イベント開催日がどんどん近づいてきました。
妥協するのもいたし方ないか……と考え始めた矢先に「gran+ SHIROKANEDAI」に出会ったのです。
ランチミーティングの帰りに、東京都庭園美術館の緑地を散歩して帰ろうかと思って向かってみると、道の反対側に細長い物件があることに気付きました。それが「gran+ SHIROKANEDAI」だったわけですが、ビルの下まで急いで行って、書いてあった管理会社さんの番号に電話をかけてすぐに中を見せてもらいました。
──第一印象を覚えていますか?
「ここだ!」ですね。南北に縦長の空間が伸びていて、両端に窓があり、壁が使いやすく、庭園美術館の緑がすぐ目の前にあって空気の流れが本当に気持ちよかったのを覚えています。
サイズは想定したよりもちょっとだけ大きめでしたが、入り口の絨毯や空調関係にお金をかけないですむためよしとしました。入居後に自分で加えたのは、ピクチャーレールと棚ぐらいです。作品ごとに毎回高さを測るのは手間なので、ある程度決まった高さに作品を置けるようにしています。
──他に空間づくりにおいて意識したポイントはありますか?
アートギャラリーというと、敷居が高くて入りづらい雰囲気があるじゃないですか。できればそういう印象を取り払いたかったので、入り口にアロマディフューザーを置いたり、ベンチ椅子にこだわったりして、どなたにとっても居心地がいい空間を心掛けました。
また、アーティストの皆さんにとっての安心感を意識しました。個展は思いついてすぐできるものじゃないんです。作家さんと打ち合わせを重ね、3ヶ月とか半年、場合によっては1年以上前から計画を立てて進めていくものです。相談の最初の方の段階で、「こういう場所ならやってみたい」と、ギャラリーの雰囲気を気に入ってもらえるかがすごく大事なんです。
──『Gomeisa GALLERY』を盛り上げていくために、舩橋さんが力を入れているイベントがあれば教えてください。
『メタバースの原風景』という企画を継続して開催しています。メタバース=仮想空間、つまり“ここじゃないどこか”から見た、自分にとっての原風景を見たらどうなんだろうというコンセプトで、毎回多くのアーティストに参加いただいています。
──取材時に在廊していた作家・向井淳二さんも出展されていたのですね。
「僕の作品に《近くて遠い》というシリーズがあります。今回『メタバースの原風景』に展示したものは、親に連れていってもらった動物園の景色、記憶のどこかにありそうな風景など、まさに近くて遠い作品をセレクトしました」(向井淳二さん)
向井さんの作品、本当におすすめです。吸い込まれる力強さがありますよ。
子どものころに大切にしていたものって、男性でも女性でもきっと一つはあると思うんです。そしてそれはいつの間にか、なくなるんですよね。そうした原風景としての体験を具現化した表現を広めていきたいです。
──『Gomeisa GALLERY』を通じて、これからどんなことを伝えていきたいとお考えですか?
よく「日本人は美術が好き」と言われますが、私はちょっと疑問に思っています。たしかに美術館を訪れる人数は多いかもしれませんが、世界全体で7兆円といわれるアート市場の中で日本はたったの2500億円です。
日本のアート市場は停滞していると言わざるをえません。だからこそ、私はそこに風穴を空けたいと本気で思っていますし、才能あふれるアーティストを一人でも多く食べられるようにしたいんです。
自分が満足する作品をつくって、「理解してくれなきゃそれでもいい」という人もいます。しかし売れなくては生活ができません。私はそうした役割分担の中で生きてきた人間ですので、市場を無視している作家さんと世間のバランサーとして機能していきたいと思っています。
作家さんたちはみんなアーティストなので、作品をつくることはプロフェッショナルなんですが、作品にかける想いやストーリー、ロジックを言葉でつむぐことが苦手な人もいます。SNS、動画など、一人ひとりに合ったPRをぜひお手伝いしたいですね。
私はアート分野においては後発組です。新人アーティスト、これから名を成していこうとする作家さんたちと一緒に成長できればうれしいです。既存の概念や価値観にとらわれることなく、グローバル目線でのアートと多様性あふれる個性を発掘していきます。
※本記事に記載されている内容は公開日2023年2月15日時点の情報です。